高血圧とは
高血圧は日本の成人に最も身近な病気であり、国民の3人に1人がかかっているともいわれています。
初期にはあまり自覚症状がないことから、放置してしまっていることも稀ではありません。しかし、高血圧を放置すると、脳や心臓、腎臓や眼、全身の血管においてさまざまな障害が起こりやすくなると言われています。特に、脳卒中や心筋梗塞など心血管疾患の発症率や、それに伴う死亡率が高いといわれており、放置してはいけない危険な病気です。
高血圧の原因とは
高血圧にはタイプは、他の疾患や薬剤の副作用が原因で起こる二次性高血圧と、原因のはっきりしない本態性高血圧があります。
日本人のほとんどは「本態性高血圧」と言われています。本態性とは「原因が明らかではないこと」を意味していますが、高血圧では生まれつき高血圧になりやすい人が、肥満、アルコール、運動不足などの悪い生活習慣を続けることによって心臓や血管に負担をかけた結果、血圧が上がってしまうタイプだと言われています。本態性高血圧を防ぐには、まず、日頃の生活習慣の見直しが大切です。
一方、高血圧の10%〜15%は何らかの原因がある二次性高血圧といわれています。これは、腎臓病や内分泌系の病気、薬剤などの影響で高血圧が起こると考えられます。
二次性高血圧は、通常の降圧治療では効果がないこともありますが、原因を取り除けば血圧は下がると言われています。
高血圧の基準値
血圧の基準として広く採用されているのが、WHO(世界保健機関)/ISH(国際高血圧学会)、米国高血圧合同委員会による分類です。
日本でもガイドラインが作成されており、病院や健診施設などで測定した血圧値が、収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上(140/90mmHg以上)を高血圧と診断されます。
自宅で測定する家庭血圧では、それより低い135mmHg以上または85mmHg以上(135/85mmHg以上)が高血圧とされています。なぜ家庭血圧が低く設定されているかと言いますと、診察室では慣れない環境からの緊張で血圧が上がりがちです。一方リラックスした状態では診察室での測定よりも低くなる傾向がありますので、家庭血圧での基準値は低く設定されているのです。「家庭血圧が本来の血圧値である」とも言われていますので、できれば自宅でも測定するようにしましょう。
また血圧は、常に一定ではありません。1日の中でも時間帯によって変化すると言われています。運動やストレス、気温などによって、血圧は上がりやすくなります。
どんな状況であれ、健康診断や自宅で測定した血圧値が高い時など少しでも気になることがありましたら医師にご相談ください。
降圧目標値について
降圧目標値は、年齢や合併症によって違います。
家庭血圧の降圧目標値をみると、若年、中年、前期高齢者(75歳未満)では125/75mmHg未満です。一方、75歳以上の後期高齢者では、それより高い135/85mmHg未満を目安としています。高齢になるとさまざまな臓器の機能が低下していることが多く、血圧低下が臓器の機能に悪影響を及ぼす可能性もあるため、慎重に治療する必要があります。
また、糖尿病、蛋白尿のある慢性腎臓病(CKD)を合併している患者さんの降圧目標値はより低く、125/75mmHg未満とされています。糖尿病や蛋白尿のあるCKDを合併している高血圧患者さんは、心筋梗塞、脳卒中などを発症するリスクが高いため、より血圧を下げ、これらの疾患を予防するために厳格な目標値が設定されています。
日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会(編):高血圧治療ガイドライン2019 2019 ライフサイエンス出版:53,2019より
このように降圧目標と一口に言っても個人差がありますので、血圧値が高い方は医師にご相談ください。
高血圧の治療について
高血圧の治療は、「食事療法」や「運動療法」などを含めた「生活習慣の修正」と血圧を下げる「降圧薬」による治療です。治療計画は高血圧のレベルや、糖尿病・高脂血症などの心血管病に関する危険因子の有無によって決定されます。
急激に血圧を下げて一時的に目標値を下回るだけでは意味がありません。長期的な目標値を設定し、その値まで血圧までゆっくり下げ、その状態を維持していくことが重要となります。